農業は人間生活の根拠となる食料の生産を担う極めて重要な産業であり、また林業は木材を生産するという目的のみならず近年は環境保全の見地から大変注目されています。
しかしながら就農人口の減少や高齢化が進み、職業としての農林業への関心は、他の産業に比べ著しく低いのが実状です。特に都市部の生徒の皆様にとっては、間接的にしか農林業を知ることができない状況です。実際の作業を体験することで、より身近な存在と感じていただければ幸いです。
また農林業は動植物を飼育・栽培、販売することがその主目的ですが、言葉を変えればいのちを育みつつ、その犠牲の下に成り立っている産業です。他の産業と同様に、利潤の追求は当然の命題で、採算性の前に一般的には残酷とも思える行為が行われているのも事実です。実際に自らの手で作物・家畜に触れることは、生態系の中での人間の位置を知り、他の生命への感謝と慈しみの心を持った人間になるための重要なステップになるものと確信しております。
現代文明において工業やその製品は便利さと引き換えに環境を著しく汚染してしまいました。生産性を理由に環境への配慮が足りなかったり、なされなかったことがあったのは農林業も例外ではありません。現在、環境対策は地球規模での取り組みを必要とする大変重要な問題となっていますし、多くの分野で対策がなされるようになってきました。地球環境がそのまま生産現場である農林業にとって、環境を汚染しないのは勿論のこと、環境を回復するための努力が必要不可欠となっています。土や水、大気を肌で感じ、その直接の生産物である動植物に触れることで、環境問題をより身近なこととしてとらえるチャンスにしていただきたいと考えております。
八ヶ岳中央農業実践大学校「農林業体験―学習手引書より」